I・E 女性 40歳
知人の妹様
当医院初診時: |
平成14年4月 |
今回初診時: |
平成21年5月 |
今回主訴: |
左下6番部の疼痛 |
【処置内容】
以前の左下6番部の近心根のみ保存して経過観察していた同歯が抜歯、結果左下の大臼歯群の喪失によりいよいよ義歯適応症となったものをインプラント2歯により補綴
今回治療期間: |
約4ヶ月間(抜歯からインプラント補綴まで) |
費用: |
院長知人の為院長価格(マル秘)と記載させて頂きます。 |
【今回治療後の考察】
以前より当医院にて拝見させて頂いておりますが、それ以前では左下6,7番にはあまりにも不適合の合金のクラウン(いわゆる銀歯)が装着してありました。
結果論ですがおそらくそれらの旧歯冠補綴、結果的な不良根管治療、患者特有の咬合により現在に至ったものと考えられます。同部の平成14年からの経緯は色々あって全て記載しませんが、平成14年から当医院での左下大臼歯部の経緯は、歯根分割、ヘミセクション、自家歯牙移植等、結構施術しております。極度のグライディングブラキサーでインプラント絶対禁忌とおっしゃる先生方もおられると思いますが、義歯にしても同様なので上部構造に付与する咬合で対応していくしか無いと考えています。当然知人なので何かあればすぐに連絡し、定期的に来院することを条件にチャレンジしています。
やはりまだ若く「義歯はちょっと・・・」という患者様の意向が尊重されますので、あの手この手で保存処置をし続けて納得した心理状況でインプラントとしました。
何度も記載させて頂いていますが、このサイトの作成目的は宣伝ではなく、出来るだけ自身の症例(作品とも言える)の経緯や患者様とのやり取りを良くも悪くも記載する為に作成しました。極力表現を分かりやすくお伝えしようと努力していますが、なかなか能力不足で難解ではあります。
ビフォーアフターのみを掲載するような営利目的の美辞麗句を並た軽薄なサイトにはしたくありませんので、専門用語も極力避けて表現も噛み砕いて記載しています。が、やはりなかなか難しいなと思っています。
【リスク・副作用】
・インプラント治療には保険が適用されないので自費(保険適用外)での診療となり、治療費が高額になります。
・インプラントの埋入ともない、外科手術が必要となります。
・インプラントの耐用年数は、口腔内の環境(骨・歯肉の状態、噛み合わせ、歯磨きの技術、メンテナンスの受診頻度、喫煙の有無など)により異なります。
・セラミック治療は保険適用外・自費診療となります。
・健康な歯、天然歯を削る必要があります。
・歯の状態によっては神経を治療が必要な場合があります。
・強い力をかけると割れる(欠ける)可能性があります。
症例 case 10
症例発表CASE 10
顕著なグライディングタイプ患者の臼歯インプラント症例
1. 初診時パノラマ
今回初診時(平成21年5月)のパノラマ写真ですが、諸先生方にはもうこの段階でオーバーバイトがマイナスの咬頭対咬頭のグライディングブラキサータイプが理解できると思います。左下6番近心根はもう限界の状況です。
患者様には今度疼痛が出たら抜歯して、建設的に次を考えようと以前より伝えてありました。歯根吸収も顕著です。
2. 初診時正面観
今回初診時の正面観です。特徴的なのは舌側転位して、もう正面からも見えない左右上顎2番です。もう審美的にも衛生的にも抜歯して前歯を揃えたいところですが、切端咬合でキートゥースなので、咬合学的には絶対抜歯してはいけない歯だと考えられます。
3. 初診時下顎面観
今回初診時下顎面観です。左側臼歯部に小臼歯が3本並んでいるように見えますが、3本目は大臼歯の近心根のみの歯冠です。かなり咬合調整を繰り返してきましたので、セラミック部分が穿孔しています。
このタイプは上下顎を嵌合させても空隙が多く、舌突出や頬粘膜が過緊張することでしか嚥下できないので、舌肥大や頬が厚く強くて治療が困難です。
4. 初診時左側面観
今回初診時左側面観です。3本小臼歯が並んでいるように見えますが、最後臼歯は6番近心根のみでの歯冠です。今回抜歯予定で左側下顎には大臼歯部が喪失ということになります。
ちなみに前記同様、側方写真の撮影時にも頬粘膜が厚くて苦労します。
5. 左下6番近心根
だいぶ長期間慢性の根尖病巣の存在の為、歯根吸収が顕著です。遠心歯根面も根尖まで歯周ポケットが到達しており、歯石もレントゲン上で見てご理解頂けると思います。逆に良く持ったとも言えます。
6. 左下6番近心根抜去後下顎面観
抜歯してから2ヶ月目のこれからインプラント体埋入手術をする写真です。
抜歯の際は骨吸収を極力抑えるような手法で行っています。なんとか頬側の歯槽骨の吸収は最小限に抑えられ頬舌幅計が連続しました。
7. 左下6番近心根抜去後左側面観
叢生が顕著なので臼歯群が平均的な日本人よりも前方位にあります。さすがに義歯やインプラントにする段階になったと患者様は理解したようです。
8. 下6番近心根抜去後パノラマ
抜歯してから約2ヶ月後のパノラマ写真です。
抜歯から2ヶ月待ってインプラント処置にしたのは、患者様の意向以外ありません。抜歯同時埋入適応ですがあくまで患者様の心情を考慮しております。
9. 左下6,7番インプラント体埋入
抜歯後2ヶ月してからインプラントを埋入しました。
私はいくつものインプラントメーカーを使い分けていますが、今回はHAタイプのワンピースインプラントを使用しました。その理由は、インプラント体とアバットの2ピースだと、極度のブラキサーの患者様には構造が一つ複雑になり、スクリュー部分が緩んだり破折するのが嫌だったからです。歯冠はずっと仮着として不慮の咬合力が加わった時には、歯冠が外れてくれてインプラント体を守るようにしたいと考えたのです。
10. 左下6,7番埋入アップ
インプラント埋入手術直後です。埋入に関しては当然CT撮影を行い、3D画面上で患者様固有の解剖学的見地を考慮して、歯軸やサイズを選択しデータからステントを作成して施術します。
11. インプラント体バイオインテグレーション後
インプラント体埋入から2ヶ月の歯冠作成前の状態です。仮歯はインプラント手術から約3週目で入れましたが、だいぶ周囲歯肉の形態や状況が良好なので、歯冠の作成に入れます。
12. 左下6,7番歯冠装着後下顎面観
インプラント埋入から2ヶ月目で最終補綴物である歯冠をセラミックで作成して仮着した時点です。ずっと仮着で行こうと考えています。何かあれば歯冠が外れるよう仕向けています。一応ナイトガードも継続して使用してもらいます。
13. 左下6,7番歯冠装着後左側面観
最終補綴物であるセラミック冠を装着した左面観です。しばらくずっと無かった7番も対合歯と今回処置で咬合できました。ちなみに左上2番の重要性がご理解頂けると思います。
14. 左下6,7番歯冠装着後舌面観
しばらく6,7番が無い状態でした。インプラント体埋入後1ヶ月で仮歯を装着したら、やはり当初は舌や頬粘膜を咬んだりしていましたが、最終補綴物を入れた2ヶ月目には咬まなくなりました。
15. 左下6,7番歯冠装着後正面観
正面から見ても左下6,7番があると、やはりよろしいかなと思いました。
ちなみに上顎左右の2番の舌側転位は顕著です。特に左上2番は抜けば良いのにと考えがちです。確かに審美的そして口腔衛生的にはそう言えます。しかし咬合学的には、これを抜いたら確実にパラフャンクションが助長され、臼歯部がやられます。
16. 左下6,7番インプラント処置終了後パノラマ
インプラント体埋入から2ヶ月後、歯冠を装着(仮着)した時点のパノラマ写真です。
後は定期健診に移行しました。
顕著なグライディングタイプ患者の臼歯インプラント症例